- shimizu2359800
第1回 法律用語解説
皆さんが日常生活の中で遭遇しそうな法律用語について、
これから定期的にできるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
様々な場面が想定されますが、しばらくは今とてもご相談が多い
「相続」に関連する用語を取り上げて参りますので、お付き合いください。
「特別受益」と「特別受益の持ち戻し」
第1回は遺産分けををする場合にしばしば起こる問題としてこの二つを解説します。
簡単に申しますと、
「特別受益」とは、被相続人※1から一部の相続人に対して特別に財産が贈与され、
その相続人が利益を受けること。
「特別受益の持ち戻し」とは、遺産を分割する際、実際に残された財産と「特別受益」で贈与された
財産を合算して各相続人の相続分を決めることです。

《解説》
被相続人からの「生計の資本」としての生前贈与は「特別受益」となり、
相続時において相続財産(みなし相続財産)となります。
よって、この場合遺産分けすべき財産は
お父さんが残した2000万円 + お兄さんがもらった1000万円 = 3000万円

…になります。
これを法定相続分(この場合二人の子が相続人ですから2分の1ずつ)で分けると、
一応の相続分は各自1500万円 …ですね。
お兄さんは既に1000万円の贈与を受けていますから、これを差し引いた
500万円がお兄さんの具体的な相続分。
あなたの具体的な相続分は1500万円です。
《まとめ》
このように、被相続人から一部の相続人が特別な財産を贈与されて利益を得ること、
また、そうして得た利益を「特別受益」と言います。
「特別受益」に当たるのは、生計の資本としての贈与のほかに、
共同相続人※2に対する遺贈※3や
婚姻や養子縁組のための贈与があります。
なお、親からの資金援助すべてが「特別受益」となるわけではありません。
学費、医療費など扶養義務の範囲内の援助であれば「特別受益」とはみなされませんのでご注意ください。
そして、遺産分けをする際に前渡しした分を相続財産に含めて計算することを
「特別受益の持ち戻し」といいます。
このような措置は実質的に公平な相続が行われることを目的としています。
ただし、生前贈与をした人が「自分が死んでも持ち戻しはしなくてよい」と意思表示をした場合は
「特別受益の持ち戻し」が免除されます。
※1 被相続人 相続される人。相続される財産の元の所有者のこと。
※2 共同相続人 複数の人が共同で相続する場合の相続人。
※3 遺贈 遺言によって財産を人や団体に贈与すること。